かつてのロナウジーニョには、もう二度とお目にかかれないと思っていた人も多いはずだ。カカーの代わりにミランの中盤を指揮することなんてできないと も…。さらには、ヨーロッパのトップレベルでプレーするのは無理だから、輝きを取り戻すためにブラジルへ帰るべきだと結論づけていた人もいただろう。
そういう人はミランに対しても、クズだとか化石級のベテラン揃いのチームは落ちるところまで落ちて優勝争いすらできないとか、ロナウジーニョに頼りすぎて状況はさらに悪化するとか、ひどいことを言っていたに違いない。
ところが太陽が地球の周りを回る、マグラダのマリアは罪の女、ドラキュラ伯爵は吸血鬼、コウモリは盲目といった仮説同様、論理上や経験上正しいと思っていたことが崩れ落ちてしまうことがある。
なぜならロナウジーニョは調子を取り戻しているし、おかげでミランは結果を出している。セリエAでトップを走るインテルさえ掴んでいない新たな流れを掴み、安定感を増している。
セリエA好きは夏に大型補強をしたユヴェントスの夜明けを予感し、ミランにはそれが足りないと揶揄したが、実際にはミランが上回っている。セリエAではユヴェントスに1ポイント差をつけて2位、チャンピオンズリーグでも決勝トーナメントへ進んだ。
しかも、ロナウジーニョはここまで8アシストでリーグのアシストランキングでトップに立ち、自らも3ゴール(第15節終了時)。もちろん、データにはからくりがあることも多いが、サッカー界では数字は嘘をつかないという面もある。
バルセロナで輝きを放ち、文句なしに地球上で一番のテクニックを誇る最高のプレーヤーだった数年前の姿を完全に取り戻したわけではない。しかし、29歳の今、再び進化を見せている。
ミ ランの監督に就任したレオナルドはガッリアーニ副会長とともに、ロナウジーニョならレアル・マドリーへ移籍したカカーの穴を埋められると信頼を寄せてい た。完全にそれができているわけではないが、痛手を和らげているのは間違いない。開幕戦でシエナに苦しめられたとき、アシストと華麗なプレーでチームを 救ったのはロニー。インテル戦(第2節)では老体ばかりのチームメート同様、良いところがなく、ミランは続くチャンピオンズリーグでチューリッヒ(ホー ム)にまさかの敗戦を喫してしまったが…。
それでも、大きな屈辱を味わった後、ミランは徐々に調子を上げ、ロナウジーニョは毎試合、絶対 的な存在感をアピールしている。特にサンプドリア戦(第15節)では、得意のスルーパスで何度も相手の守りを切り裂いていた。レオナルドの監督としての能 力は未知数だが、ロナウジーニョの長所を活かす使い方ができるだけのクレバーさは持っている。ベテランが多いミランでは速い攻撃が難しいため、パスを多用 したスタイルに変えたのも新監督である。
自由に動くことを許され、長い距離を走るより、短くて速いパスを通すことを求められているロナウ ジーニョ。カカーが去ったことで、より自由にピッチを動けるようになり、中盤の軸となった。また、右サイドにスピードとテクニックを持ったパトが入ったこ とで、ロナウジーニョの左からのカットインも活き、攻撃の幅も広がった。
レオナルドはこれまでの4-3-1-2ではなく4-3-3にシス テムを変え、左のロナウジーニョは自分の前にいるターゲットマン(ボリエッロが主で、ときどきフンテラール)を意識できる。また、広い視野を持つピルロ、 競り合いに強いアンブロジーニ、エリア内への攻め上がりが武器のセードルフと、ピッチの至るところにサポート役もいる。
ただ、ミランは完全復活したという判断はさすがにオメデタすぎる。今までの対戦相手は格下のチームだったし、ここまで目立ったケガ人もなかった。30歳以上のメンバーが多いだけに、この先いい状態をキープできるかはまだ分からない。
補強も必要だが、来月再開する移籍マーケットで大物を獲る余裕はないだろう。ロナウジーニョの復活は一時的なものかもしれないし、自転車置き場で一台の自転車が倒れると全部が将棋倒しになってしまうように、1つ負けたら躓き続ける恐れもある。
そうなったら、また振り出し。ミランとロナウジーニョは再びもうおしまいだと言われ始めるだろう。
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